「やまない微熱」
鼻腔にこびり付く鉄錆の臭い。
喉を通る空気は重くるしい。
咳き込む度に舌に不快の味。
あぁ、これは血の味。
幾度と無く味わった生きている証。
そして、死へと誘われつつある証。
体からほとばしる熱気が思考を塞ぐ。
私を現世から遠ざける意識の乱れ。
くるしい。くるしい。くるしい。くるしい。
いつの間にか、手の平は赤色に染まる。
悶える心に反し、体は動くことすら疎ましい。
私には待つしかない。
全てが終わるのを待つしかない。
・第一章「初恋の人」 1 2 3 4
・第二章「優しい人」 1 2 3 4
・第三章「私の想い」 1 2 3 4
・第四章「私の恋」 1 2 3
・第五章「やまない微熱」 1 2
・エピローグ